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第1回カーボン・オフセット大賞エントリー事例
生物多様性条約COP10におけるカーボン・オフセット ー あいち・なごやの取組 ー

応募団体:愛知県、名古屋市、名古屋商工会議所、社団法人中部経済連合会

1.応募する活動の名称・タイトル
生物多様性条約COP10におけるカーボン・オフセット ー あいち・なごやの取組 ー


2.活動の概要
<オフセットの分類>
会議・イベント開催オフセット

<排出量の事前認識・・算定>
 2010年10月、愛知県名古屋市で生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催された。
 COP10は国連が主催し、日本政府が開催国としてホストを務めた。開催地元では行政機関である愛知県・名古屋市と、経済界の名古屋商工会議所・(社)中部経済連合会が中心となり支援実行委員会を組織し、国連・日本政府の会議開催を支援するとともに関連事業を実施した。
 COP10の開催により排出される温室効果ガスについては、日本政府と支援実行委員会で以下のような大枠整理に基づきオフセットに取り組むこととなった。
 結果として、支援実行委員会では、次述する事業、対象活動範囲にかかる排出量計92.41t-CO2についてカーボン・オフセットを実施した。

<オフセット対象範囲・・バウンダリ>
事業対象活動範囲排出量
(t-CO2)
①COP10公式エクスカーションバス・船舶移動0.72
②COP10地元主催レセプションバス・鉄道・乗用車等移動、
会場での電力・都市ガス使用
1.33
③コングレス・バッグの配布バッグの製造、運搬51.70
④COP10参加者用ハンドブックの配布冊子の製造・運搬2.97
⑤COP10併催屋外展示会
「生物多様性交流フェア」
会場での電力使用7.15
⑥COP10併催関連事業
「地球いきものEXPO」
会場での電力使用1.18
⑦COP10併催関連事業
「COP10情報発信ステーション」
会場での電力使用1.33
⑧会議参加者の空港~市内間の移動鉄道移動3.41
⑨会議参加者の市内滞在中の移動地下鉄移動17.28
⑩COP10併催国際会議
「生物多様性国際自治体回議」
会場での電力使用5.34
92.41


<排出削減努力の実施>
 近年、大規模会議・イベント等の開催にあたっては、環境に配慮した取組を実施することが時代の趨勢となっている。支援実行委員会でも、COP10開催にあたっては環境配慮に取り組むこととし、COP10を環境にやさしい会議・イベントとするため実施する事柄について「あいち・なごやの環境配慮」(2010年8月)として策定・公表した。支援実行委員会として、同計画に従い着実な取組の実践を図ることとした。
 また、同計画は日・英語版をウェブサイトに掲載するとともに、COP10参加者全員に配布されるハンドブックに要旨を掲載し、参加者始め関係者に対し取組への理解と協力を訴えた。
 COP10終了後には、支援実行委員会の経験を次の大規模会議・イベントの参考にしてもらうため、取組の実施状況を「あいち・なごやの環境配慮 取組報告」として取りまとめ(日・英)、公表した。

<取組の実施期間>
主に2010年10月11日~10月29日の3週間について実施した。

<クレジットの種類>
2種類のJ-VERのほか、グリーン電力証書を活用した。

<プロジェクト名称>
(1)新潟県佐渡市「トキ」の森整備事業
(2)住友林業株式会社社有林プロジェクトⅠ
(3)グリーン電力証書(愛知県産の太陽光発電)
  (グリーンエネルギー認証センターNo.09P237-1004-1006-00000001A03~00015000A03)

<無効化に関する状況>
(1)2011年1月20日無効化済
(2)2011年3月24日無効化済
(3)2010年10月4日証書発行済

<情報サイト>
生物多様性条約第10回締約国会議支援実行委員会:環境への配慮

3.CO2排出削減努力とカーボン・オフセットの内容
 カーボン・オフセットの内容は、次のとおりである。
手法事業排出量(t-CO2)
J-VER
(トキクレジット)
③コングレス・バッグの配布51.7068.98
⑨会議参加者の市内滞在中の移動17.28
J-VER
(住友林業クレジット)
⑤COP10併催屋外展示会「生物多様性交流フェア」7.158.64
⑥COP10併催関連事業「地球いきものEXPO」0.16
⑦COP10併催関連事業「COP10情報発信ステーション」1.33
グリーン電力証書⑥COP10併催関連事業「地球いきものEXPO」1.026.36
⑩COP10併催国際会議「生物多様性国際自治体会議」5.34
グリーン電力証書(※)①COP10公式エクスカーション0.728.44
②COP10地元主催レセプション1.33
④COP10参加者用ハンドブックの配布2.97
⑧会議参加者の空港~市内間の移動3.1
92.41
(※)愛知県と名古屋市がそれぞれ保有するグリーン電力価値9,949kWhを利用した。

 実務としてカーボン・オフセットに取り組むにあたっては、事前に各事業の担当者へ周知を図るとともに、施設管理者始め関係各所にも予め協力を要請し、排出量の算定にあたり必要となるデータの収集に遺漏がないよう留意した。
また、根拠数値や排出量の算出方法などを記録として整理し、今後開催される大規模会議・イベントにおけるカーボン・オフセットの取組に資するようにした。

4.CO2排出削減以外の効果(1)会議テーマとの整合性と生物多様性の保全
 COP10は生物多様性をテーマとする会議であることから、使用するクレジットについても生物多様性の保全との関連性を重視した。
 使用した2種類のJ-VERのうち、トキの森のクレジットは、2008年に放鳥された国際保護鳥トキの生息環境の向上や豊かな森林生態系への保全への寄与を目的としたクレジットである。また、住友林業のクレジットは、J-VERの中でも持続可能な森林施策による長期的なCO2吸収量の確保を目的とした「持続可能な森林経営促進型プロジェクト」に位置付けられており、ともに生物多様性の趣旨に適うものとなっている。

(2)オフセット・クレジットの活用以外の排出削減の取組
 支援実行委員会では、オフセット・クレジットだけでなくグリーン電力証書もカーボン・オフセットに活用することとした。
 愛知県では、カーボン・オフセットの普及促進を図ることなどを目的とする「あいちカーボン・オフセット推進協議会」が、愛知県と県内市町村で組織されている。同協議会では、愛知県産の住宅用太陽光発電由来のグリーン電力証書の斡旋事業を行うなど、グリーン電力証書の活用を推進しており、また、環境価値の地産地消という面も考慮し、グリーン電力証書の活用にも取り組むこととした。

5.普及啓発の効果(1)話題性
 支援実行委員会では、(前述のように)事前に環境配慮指針を策定・公表し、環境配慮の取組について広く情報発信を行うとともに、実施状況についても報告書として作成・公表した。
 カーボン・オフセットの取組は、COP10開催地の取組として全国紙でも取り上げられたが、一方で、COP10では日本政府もカーボン・オフセットを実施している。国の取組と比べ認知度や話題性では及ばないが、開催地の取組についても広く知ってもらえれば幸いである。

(2)地方自治体の取組拡大に向けて
 当時、国や民間に比べ特に地方自治体では、クレジットを「創出」する事例はある一方、「活用」する事例は少ない状況であった。しかしながら、実際に取り組んでみると、(近畿地方環境事務所主催の自治体向けカーボン・オフセットセミナーに招致されるなど)、地方自治体のカーボン・オフセットに対する関心は高いものがあった。支援実行委員会の取組が、今後、地方自治体がカーボン・オフセットに取り組むにあたっての参考になれば幸いである。

6.ストーリー性
 大規模会議・イベントの実施にあたり、環境配慮に取り組むことは今や時代の趨勢となっている。
 日本では、2008年5月のG8環境大臣会合、同年7月の北海道洞爺湖サミットでカーボン・オフセットが実施されたほか、2008年1月には環境省から「会議等の環境配慮のススメ」が公表されている。
 海外でも、日本の前年にサミットを開催したドイツでは、2006年3月に「環境配慮型イベントの企画ガイドライン(仮訳)」が策定されており、2008年の生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)のボン市開催にあたっては、環境配慮の取組について「グリーンCOP」として公表された。国連でも、2009年2月には「環境にやさしい会議の手引き(仮訳)」が策定されている。
 支援実行委員会は、開催地の行政機関・経済界が中心となって組織する、地元の会議支援組織ではあったが、このような時代の流れと、環境会議のホストシティとしての立場に鑑み、環境配慮を重要事項の一つに位置付けて取組を行った。

 支援実行委員会では、2010年8月、COP10の開催にあたり取り組むべき環境配慮について、「あいち・なごやの環境配慮」として策定・公表した。支援実行委員会では、会場、輸送、宿泊、製品・サービスの調達と利用、飲食の提供、廃棄物、コミュニケーションの各分野について環境配慮に取り組むこととし、「エネルギーとカーボン・オフセット」についても、これらと同様に重点分野と位置づけ、オフセット・クレジットを活用したカーボン・オフセットに取り組むことを打ち出した。

 (前述のように)当時、地方自治体はクレジットを「創出」することはあっても「活用」する事例は希少であった。支援実行委員会内でも、カーボン・オフセットに取り組むことに躊躇する意見もあったが、時代の流れ、環境をテーマとした国際会議開催地としての責務、そして地方自治体・地域における取組の拡大等を総合的に考慮の上、カーボン・オフセットに取り組むこととした。

 実際に取り組むあたり、課題だったのはノウハウの蓄積がないことであった。地方自治体に先例を求めることは難しく、また、排出量の算定等にあたりコンサルタントを活用することも難しい状況であったため、環境省等が刊行している各種マニュアルを参考に、可能な範囲で、手探りながら取り組んでいった。

 次に、オフセットの手法については、支援実行委員会の構成主体である愛知県・名古屋市がグリーン電力証書の活用を推進していたこともあり、(イレギュラーながらも)オフセット・クレジットと併用してグリーン電力証書も活用することとした。使用したグリーン電力は、愛知県内の住宅用太陽光発電由来のものとし、環境価値の地産地消にも配慮した。

 オフセット・クレジットについては、生物多様性をテーマとする会議であることに鑑み、生物多様性の保全に関係の深いものを活用することとした。
採用したトキの森のクレジットは、2008年に放鳥された国際保護鳥トキの生息環境の向上や豊かな森林生態系への保全への寄与を目的としたクレジットである。また、住友林業株式会社から現物寄附としていただいたJ-VERクレジットは、J-VERの中でも持続可能な森林施策による長期的なCO2吸収量の確保を目的とした「持続可能な森林経営促進型プロジェクト」に位置付けられており、ともに生物多様性の趣旨に適うクレジットを確保することができた。

 COP10は、関連議定書会議も含め、3週間を会期とする会議であった。支援実行委員会では、主催者である国連とホストである日本政府の会議運営を支援するとともに、屋外展示会やイベント等の関連事業を実施した。
 結果、支援実行委員会としてカーボン・オフセットする温室効果ガス排出量は92.41t-CO2となり、(前述のように)2種類のJ-VERとグリーン電力証書を活用してオフセットを行った。

 一方、COP10では、日本政府もカーボン・オフセットを実施している。オフセットの手法の確実性や対象量、話題性、情報発信力等の各面について、政府の取組は支援実行委員会の及ぶものではないが、支援実行委員会のこの経験が、今後の大規模会議・イベントの開催にあたり、開催地にとって参考になれば幸いである。






CO-Net事務局

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